CALENDAR
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< December 2018 >>
ARCHIVES
CATEGORIES
MOBILE
qrcode
『荒野の古本屋』森岡督行 晶文社 2014


 連想したもの:森岡書店の隣を流れる川とそこにかかる橋、レイモンド・マンゴー、風呂なし、神保町、写真集


 著者の森岡さんは、ぼくと同い年だ。
大学を卒業して上京したのも同じ1997年なら、安い風呂なしアパートに住んでいたところまでそっくりだ。
 森岡さんが予算の二千円を手に、神保町の古本屋街へ向かうとき、ぼくは渋谷か新宿の中古レコード屋さんへ日参していた。知り合いでもない若者たちが、東京の空の下で同じような暮らしをいていた。きっと似たような暮らしが97年にはゴマンとあったし、今も繰り返されているのだろう。

 この本はこんなふうに始まる。

 「この度は本書を手にとっていただきありがとうございます。東京・茅場町にて、森岡書店という屋号で古本屋と  ギャラリースペースの運営を行っております、森岡督行と申します。」

 「何だ、ただの冒頭のあいさつか」と思いますか。ぼくには今の自分をこんな簡潔な言葉で言い切れる潔さはない。いろんな言い訳や、余計な説明を加えたくなってしまう。森岡督行という男が、屋号を背負って生きてゆく覚悟を感じさせる一文である。森岡さんは「自分の店を開く」という決心をして、実際にそうなった。ぼくは何の決心もしないまま、ぼんやりとした中年になりつつある。

 この本は、復活した〈就職しないで生きるには〉(元々はレイモンド・マンゴーの本のタイトル)シリーズの第二弾となる。ミロコマチコさんの装画、矢萩多聞さんの装丁もすばらしいので、ぜひ書店で実物を手にとっていただきたい。きっとほしくなるし、読んだら誰かに話したくなる。

                             百葉箱 湯田
| 読んだ本 | 22:36 | comments(0) | - |
『直感を磨くもの 小林秀雄対話集』小林秀雄 新潮文庫 2014



 連想したもの:昭和、文士と武士、滑舌のよさ、小津安二郎、七三分け

 小林秀雄の対話集。「対談」ではなく「対話」としたところに編集者の強い意志を感じる。当たり障りのない会話ではなく、きちんと肚を相手に向けて、言葉で切りむすぶという「対話」であろう。もちろん「対話」なのだから、相手を打ち倒すことが目的ではない。むしろ、小林の刀の一閃が相手のさらなる力を引き出している。

 そういう意味でもっとも面白かったのは、物理学者 湯川秀樹との対話である。達人同士のやりとりなのである。対談形式の本を読んでいてスリリングと感じたのは初めてだ。少し長くなるが、以下に印象に残った小林の言葉を抜き出しておく。

 「ほんとうの意味の仕事というものは素質のなかでの仕事じゃないかとよく考えます。(中略)つまりある自分の素質だとか、運命なんてものが、突破することのできないものが必ず与えられているので、それを肯定して、それと対決して仕事をするのが仕事なんで…(後略)」

 「政治は人間精神の深い問題に干渉できる性質の仕事ではない。精神の浅い部分、言葉を代えれば人間の物質的生活の整調だけを専ら目的とすればよい。そうはっきり意識した政治技術専門家が現われることが一番必要なのではないでしょうか。」

 その他、詩人 三好達治、作家では横光利一、大岡昇平、民俗学者 折口信夫などとの対話を収めている。


 

| 読んだ本 | 19:17 | comments(0) | - |
| 1/1PAGES |